広島大学大学院 平和教育講座
リンガヒロシマのデータベース「多言語による原爆文献」を紹介
講師 ウルシュラ・スティチェックさん
2020年12月より、リンガヒロシマの共同編集者ウルシュラ・スティチェックさん(ポーランド出身)による平和教育講義(オンライン授業・英語)が広島大学大学院(博士課程前期・後期)で始まりました。この講義の受講生は主にアジア・アフリカ・中東地域からの学生たちのほか、数名の日本人です。
彼らは、リンガヒロシマのデータベース「多言語で読む広島・長崎文献」を使用し、自分の母語で読める文献がどれだけあるかを検索します。異なる社会的背景を持ち、多様な言語を使用する学生たちが集合したバーチャル教室の環境で、このデータベースを導入する初めての試みです。
【博士課程前期コース】(科目名)Hiroshimaから世界平和を考える
- 広島における原爆被害の概要
- 被爆者や被爆者の体験を継承する語り部の活動の振り返り
- 戦後75年間、被爆の実相を語り継いできた原爆文学・漫画・音楽・映画などの芸術は民衆の反戦志向にどのような役割を果たしてきたか(提出課題)
- 平和構築を目指す国際組織の事例紹介―スティチェックさん自身が関わってきた国際アムネスティーとグリーンピースの活動について
【博士課程後期コース】(科目名)普遍的平和を目指して
現在、国際社会で起こっている貧困・飢餓・難民・環境問題・世界各地の紛争 などをテーマに、受講者それぞれの専門領域から問題解決の方法を探る。
- 原爆体験と普遍的平和-「原爆文学」とは何か
- ナチスのアウシュヴィッツ強制収容所と「収容所文学」
- ヨーロッパにおける多様な紛争とその歴史的背景
- 世界における現在の紛争(ウクライナ、ベラルーシ、ミャンマー、ソマリア、ナイジェリア、パレスチナ等)
スティチェックさんは、30年以上にわたり、ポーランド・アウシュビッツ強制収容所「収容所文学」とヒロシマの「原爆文学」を比較研究してきました。受講後、学生たちは自国の抱える緊急性の高い問題を「ヒロシマ」と関連させ、戦争防止の方策について自分の専門領域から考察するなど、さらなる展開が期待されます。
【講師略歴】
ポーランド、ワルシャワ市出身。
1987年 ワルシャワ大学新言語学部東洋学研究所東洋学科修士課程修了。
修士論文: Studies on Atomic Bomb Literature.
1991年 広島大学総合科学部比較文化研究の文部省研究生として来日。
1995年 広島大学大学院社会科学研究科博士前期課程(国際社会論専攻)
修了。修士論文「原民喜の不安文学」
2005年 広島大学大学院社会科学研究科博士後期課程修了(学術博士)。
学位論文「人間存在の不安―収容所文学と原爆文学」。
現在に至るまで、広島大学・県立大学・広島修道大学の講師として教壇に立つ。日本語、英語、ロシア語をはじめ8言語を使える。