目を凝らして表紙を見てください。76年前に米軍が撮影したきのこ雲に子供の顔を重ね合わせているのが分かりますか。私たちは、被爆50年を記念した週刊誌『アエラ特別号』を広島の古書店の老舗、アカデミーのサイトで見つけて入手しました。
『原爆と日本人-ヒロシマ・ナガサキを忘れない』と題したこの雑誌は、永久保存版の一つとしてリンガヒロシマの書架に加わりました。この『アエラ特別号』は、投下直後に撮影したと思われる多数の死傷者の写真や、10代の犠牲者が遺した弁当箱をはじめ、数々の日用品の写真であふれています。それらは、1945年にヒロシマとナガサキで起こった凄絶な状況を伝えます。
こうした写真や遺品は、広島に原爆を投下したB-29爆撃機エノラ・ゲイ号と一緒に1995年の8月にスミソニアン航空宇宙博物館で展示されるはずでした。しかしその計画は、米国の退役軍人の組織、陳情専従者、米国下院議員などから反対の声が上がって中止となり、B-29爆撃機のみの展示となったのです。
<お勧めの関連文献―被爆50年とスミソニアン論争> 各文献の概要は、リンガヒロシマによるものです。外国語版がある本は、私たちが構築したデータベースのURLを付けています。サイトを参照ください。
1.NHK取材班 『アメリカの中の原爆論争 NHKスペシャル 戦後五十年スミソニアン展示の波紋』ダイアモンド社、1996 224頁 被爆50年にスミソニアン航空宇宙博物館が企画していた「エノラ・ゲイ号」や被爆資料などの展示計画をきっかけに、米国で起こった原爆論争を取材している。展示計画に反対したアメリカ人、それに反論した歴史家たち、米国による広島と長崎への原爆投下に反対する人たちなどに米国でインタビューをし、展示の是非について賛否両意見を紹介している。また、米国の教育現場では、原爆がどのように教えられているか―教科書の内容や授業方法などを紹介。最終章は、展示計画を起案し、抗議を受けて館長を辞任したマーティン・ハーウイットへのインタビュー記事を載せている。
2.斎藤道雄『原爆神話の五〇年-すれ違う日本とアメリカ』中公新書 1995 233頁 著者は元TBSワシントン支局長で「報道特集」ディレクター。本書では、原爆投下の是非について日米の歴史観のずれを検証する。米国の教育現場では、どう原爆投下が教えられているかについてのリポートもある。
3. マーティン・ハーウイット『拒絶された原爆展 歴史のなかの「エノラ・ゲイ」』 山岡清二監訳 渡会和子・原純夫訳 みすず書房 1997 599頁
https://www.linguahiroshima.com/jp/detail.php?id=1593
4. フィリップ・ノビーレ, バートン・J・バーンステイン 編. 『葬られた原爆展: スミソニアンの抵抗と挫折』五月書房, 1995,
https://www.linguahiroshima.com/jp/detail?id=1653
5. トム・エンゲルハート, エドワード・T・リネンソール 編. 『戦争と正義 : エノラ・ゲイ展論争から』朝日新聞社, 1998. 300頁
https://www.linguahiroshima.com/jp/detail.php?id=1635